• 詩集『ひとりカレンダー』トーマ・ヒロコ著

詩集『ひとりカレンダー』トーマ・ヒロコ著

978-4-89982-155-7

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ひとりカレンダー
トーマ・ヒロコ著 並製A5判 60頁



君の声と訛りが聞きたくなった―

ふたつの空の下、描き続けた島の光。気鋭の詩人が紡ぐ13の情景
      (帯文・宮城隆尋(詩人、第22回山之口貘賞)



ヘリの飛ばない静かな街から手紙を送ろう
生まれ育った島を出てもう四ヵ月
この街からふるさとを見てみたいと思ったのだ
しかしこの街からふるさとは遠くてあまり見えない
島からこの街を見ていた時は
そう遠く思えなかったのに
  「七月三十一日の手紙  〜静かな空の下で」より

目次

トウキョウ・ガール★フロム・リュウキュウのうた

    ひとりカレンダー
    七月三十一日の手紙
    翻訳
    背中
    線路に鞄
    朝は誰かに
    左側の人
    カテイのうた

リュウキュウ・ガールのうた

    一ヶ月
    冬の花
    細い糸
    仕事始め
    6.23×4

    あとがき
     初出一覧 参考・引用文献



  翻訳



更衣室で隣のロッカーを開ける手
その腕に光る時計
「あいっ、その腕時計上等だね」
「上等」はきっと最上級の褒め言葉
けれど言われた方は怪訝な顔
「あ、その時計すごくかっこいい」

後輩が私のグラスにビール瓶を傾ける
「とーとーとーとー」
出そうになった言葉をあわてて胃に押し込める
グラスは黄色く染まっていく
「あー、その辺で」

「そんなにてーげーでいいの?」
「あの人、またふゆーしている」
「何とぅるばっているの?」

馴染んできた言葉で話したくても
みんなの不思議がる顔が目に浮かぶ
だからといってうまく訳などできない
日本語を当てはめてみたところで
島の言葉ほどの色は出せない
赤は桃色 黄色は肌色 青は水色
薄くなって物足りない

口に出せなかった言葉たちは血液に溶けて
私の体内をぐるぐるぐると駆けめぐる
名乗らなくてもわかる家族と電波で繋がるその時まで
島の仲間と乾杯するその時まで

工場の片隅
機械にうっかり頭をぶつけ
「あがっ」と小さく声を上げる




トーマ・ヒロコ  1982年、沖縄県浦添市生まれ
沖縄国際大学総合文化学部日本文化学科卒業
沖縄国際大学文芸部のOB・OGで作る『詩誌1999』のメンバー
詩集『ラジオをつけない日』、エッセイ集『裏通りを闊歩』がある
ホームページ「リュウキュウ・ガールのうた」http://www.geocities.jp/tokyogirlfr/
ブログ「文化系★ふつうのおきなわ」http://tokyogirlfr.ti-da.net/





版元から一言
著者は、学生時代より詩作活動を始め、精力的に詩集を発表している、新進気鋭の沖縄の詩人。沖縄の今を生きる二十代女性の飾らない感性から紡ぎ出された言葉は、読むほどに静かに染みていきます。トウキョウとリュウキュウ、埋められそうで埋まらない距離と生活と思想を見つめる詩集です。ぜひ読んでみてください。







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