• 『沖縄・学力向上のための提言 ―島を育てる学力をめざして―』三村和則著

『沖縄・学力向上のための提言 ―島を育てる学力をめざして―』三村和則著

ISBN978-4-89982-185-4

1,650円(内税)

定価 1,650円(内税)

購入数

2007年に実施された「全国学力テスト」(全国学力・学習状況調査)。ここ20年間、学力向上対策に取り組んできたにもかかわらず、沖縄の順位は都道府県の最下位、正答率はすべての教科において全国平均を大幅に下回っていた。

他の都道府県はドングリの背比べであるのに対し、沖縄県については種類の異なった小さなドングリがポツンと一つ混じっているという感じであった。

沖縄の学力を向上させるにはどうすればいいのか。沖縄国際大学で教育方法学に取り組む著者が、日々の授業、家庭生活、そして行政や地域ができることを、分かりやすく自在に提言する。

付録として「PISAの設問例」「全国学力テスト」B問題の設問例を収録した。


【目次】
第一話  学力とは何か
島を育てる学力になることを望む/学力向上運動に賛同せざるをえない/学力の「学」とは学校の「学」/学力は人格の一部/学力の重点が変化している/変化の震源地はPISA(ピザ)の得点と順位の低下/PISAは学校まかせに出来ない/国際競争力の低下を招くことが問題/どの国もPISA対策に乗り出している/沖縄人の学力が日本人の学力のミニマム? ―ハブとマングースの対話―

第二話  「全国学力テスト」の結果(一)―全国の子どもと学校―
「全国学力テスト」が浮き彫りにしたもの/正答率の高かった小学生像(全国)/正答率の高かった中学生像(全国)/正答率の高かった小学校像(全国)/正答率の高かった中学校像(全国)/相関関係の無い項目があった/正答率との相関関係が無かった小学生像(全国)/正答率との相関関係が無かった中学生像(全国)/正答率との相関関係が無かった小学校像(全国)/正答率との相関関係が無かった中学校像(全国)/規範意識と必ずしも結びつかない学力/学習サポートに効果が見られない/習熟度別クラス編制と習熟度別指導の効果に疑問 67/調査結果が目立たなくされている項目がある/行政の課題が表に出ていない/自己責任と自助努力を求める意図か

第三話  「全国学力テスト」の結果(二)―沖縄の子どもと学校― 
沖縄の小学生が苦手だった問題 /沖縄の中学生が苦手だった問題/「秋田県V全国V沖縄県」の項目にカギ/沖縄の小学生が努力するべきこと/沖縄の中学生が努力するべきこと/沖縄の小学校が努力するべきこと/沖縄の中学校が努力するべきこと/宿題を出す学校が少なすぎる/中学生の睡眠時間は長すぎ、勉強時間は二極化 /沖縄の子どもと学校の長所/課題を多く残して終わった「検証改善委員会」

第四話  沖縄の授業でできること(一)―凡事徹底― 
私の見た算数授業/「凡事徹底」ということについて/授業の凡事/「再現授業」のすすめ―授業研究について―/遊び時間を奪っての勉強が勉強嫌いをつくる

第五話  沖縄の授業でできること(二)―PISA型学力育成法―
授業方法の新段階/「知識・技能の活用力・応用力」育成法/生活のパースペクティブとその意義/発生的原点に還る方法/学習が本来の姿を取り戻すとき

第六話  沖縄の家庭でできる凡事
子どもを自立させるのは親の役目/基本的生活習慣の確立 /早寝・早起き・朝ご飯がよい理由/車登校はなるべくやめる/テレビは二時間以内・家庭での会話を/家庭環境と学力/「家庭学習の凡事」徹底/復習と予習の凡事/家庭学習(復習・予習)の方法例/「学習習慣の凡事」徹底/休日の過ごし方―学習は午前中で―

第七話  沖縄の行政や地域ができること
夢と希望の持てる社会づくりを/学力水準と新聞―地方紙と全国紙―/教育行政が今すぐできること/離島県のハンディが大きい沖縄/さまざまな「格差」と「錯覚」の発生/離島県のハンディ克服の秘策/沖縄振興計画と教育/空間的隔たりを埋める恒久的振興計画への転換を/教員の時給が八百円でよいのか/大人の真剣な努力を/洗練されたサービスを提供できる癒しの島めざして/沖縄県知事の覚悟

第八話  学力テスト体制とどう向き合うか―国・学校・教師のあり方―
学力テスト体制とは何か/医者と教師の仕事の類似点/愛知県犬山市の場合/正答率向上至上主義が招く弊害/学校別順位は示さない/ハイ・スティクスなテストにはしない/「全国学力テスト」のワナ―教育バウチャー制度―/四〇%抽出の意味/金は出さず口は出す財界―わがままな巨大企業―/愛国心教育と「強い」政府づくり/「労働者いじめ」につながる愛国心教育/教育立国ならば教師・研究者を大切に/教育にはお金がかかる/日本国憲法と教師との密接な関係/日本国憲法が必修になっている理由/教師の影響力を警戒した「ロストウ路線」/理想を追う教師が大事にされる社会に

あとがき

付録 1、PISAの設問例/2、「全国学力テスト」B問題の設問例


【著者略歴】
三村 和則 (みむら・かずのり)
1961年 宮崎県生まれ
1983年 広島大学教育学部教育学科卒業
1989年 広島大学大学院教育学研究科博士課程後期単位取得満期退学
1989年 広島大学教育学部助手
1991年 沖縄国際大学教養部講師
1994年 沖縄国際大学教養部助教授
2000年 沖縄国際大学文学部(現総合文化学部)教授 現在に至る
主な著書
『授業の構想と展開のタクト』(1987年・共著・ぎょうせい)、『現代授業研究大辞典』(1987年・共著・明治図書出版)、『重要用語300の基磯知識 2 授業研究』(1999年・共著・明治図書出版)、『現代教育の争点』(2000年・共著・八千代出版)、『学校教師の探究』(2001年・共著・学文社)、『教育の方法−明日の学びを演出する』(2001年・共著・ミネルヴァ書房)、『沖縄・生活指導を切り拓く』(2001年・共著・国土社)、『沖縄における教育の課題』(2001年・共著・編集工房東洋企画)、『日本の授業研究(上巻)』(2009年・共著・学文社)
所属学会
日本教育方法学会、日本カリキュラム学会、日本教師教育学会(理事)、日本教育学会 ほか

■2010年8月10日 初版第一刷発行