• 恋するサボテン。

恋するサボテン。

978-4-89982-136-6

1,100円(内税)

定価 1,100円(内税)

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萌香 著 四六判上製本 128頁(新刊特典!送料無料)

いろんなカタチの恋の始まりと、切ない終わりを描くちょっと変わった、恋愛小説集。


「ボクは、結衣ちゃんが好きだよ。でもボクは本物の男じゃない。結衣ちゃんは、これから結婚もしたくなるだろうし、きっと子供だって欲しくなると思う。ボクは、結衣ちゃんに何もしてあげられない。ボクといても幸せにはなれないよ」
 とうとう結衣は声を上げて、泣き出してしまった。

    「50%のカラダ。100%の恋。」より


収録作品

  恋するサボテン。

  50%のカラダ。100%の恋。

  もう一度だけ。

  恋の予感。

  愛しい背中。




「ねぇ、あんた。聞いてんの?」
 またかよ。こんな夜中に起こしやがって。良い気持ちで寝てたっつーのによー。……ってゆーか、酒くせー。また飲んでやがる。

 オレは、サボテン。そう、あの砂漠とかにいるサボテン。でもオレは、観賞用で、砂漠になんか、行ったこともないし、暑いとこは、苦手だ。
 名前は、たぶん、『ねぇ、あんた』。
 この家の主の千春に、そう呼ばれている。
オレが初めてこの家に来た時も、千春は、酔っていた。

             「恋するサボテン。」より


 ボクは、会員カードが苦手だ。というより嫌いだ。なぜなら、名前、住所までは良い。性別の欄に『女』と囲むと必ず顔を見られ、訂正を促され、免許証まで提示しなければならない。
 ボクは、中途半端な体をしている。50%は『女』だ。認めたくないが『女』なのだ。
 顔は、普通でいえば、男前かもしれない。それだけは、ボクを捨てた両親に感謝している。胸は何年か前に手術をして、男前の胸にしてもらった。
 毎日のジョギングと、腹筋マシーンのお陰で、ソフトマッチョだし、背中と左腕のタトゥは、セクシーで気に入っている。パンツ一丁なら、上半身は『男』にしか見えないだろう。
 だが、下半身と戸籍は100%『女』だ。認めたくないが『女』なのだ。

        「50%のカラダ。100%の恋。」より


 薫は、玄関を開け、電気をつけ、ソファまで行くと、淡々と言った。
「脱いで」
「えっ? ここで?」
「うん」
 いきなり、こんなムードもクソもないとこで裸になれってか? 明るすぎるし。薫がそういうやり方が好きなら、脱いでもいいんだけど。
 こんな時のために、新しい勝負パンツ買ってて良かった。それも今までのとは比べられないくらい高かったんだからね。後で薫に値段言ってやろう。
 あたしは、簡単に体を差し出したりしない。今までだって、恋人になったからといって、すぐには、許さなかった。修治の時は、特にだけど。
「ボクの彼女になるってことは、こういうことだよ。ボクと本当にセックスできる?」
 あたしは無言で、上着とキャミソールを脱ぎ、タイトジーンズのベルトを緩めようとした。薫は、あたしの手を止めた。着ていたブルーのウエスタンシャツを脱ぎあたしを包んで、抱きしめた。

                「もう一度だけ。」より


著者 萌香 moka
 
   1973年 沖縄生まれ。
   好きな作家  江國香織 西加奈子
   本作が初作品集となる。