• 『本日の栄町市場と、旅する小書店』宮里綾羽著

『本日の栄町市場と、旅する小書店』宮里綾羽著

978-4-89982-329-2

1,760円(内税)

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本日の栄町市場と、旅する小書店
宮里綾羽 著
四六判ソフトカバー 224頁


市場で出会ったひと、旅で出会った本
宮里小書店副店長、カウンター越しのエッセイ

お待たせしました、あの宮里小書店副店長、ボーダーインクのサイトでも「ガラガラ石畳」を連載した宮里綾羽さん、待望の初エッセイ集の登場です。

市場で出会ったひと、旅で出会った本。
二度見してしまう風景、うたた寝する市場、旅の余韻、何度も読み返す本。
世界はこんなにも愛おしい。
沖縄那覇市の栄町市場にある小さな本屋さん「宮里小書店」の副店長がつづるカウンター越しのエッセイ。

沖縄の市場の魅力的な人々、旅したなかで思い出す本、ゆったりと流れる時と忘れられない光景。

思わず笑い出したり、時にじんとわり涙するエッセイ集です。

●目次
  はじめに

わたしが栄町市場に座っている意味

  栄町から須賀敦子のイタリアへ
  アマクァ
  69年前の少女
  北欧のほっこり
  店の中の余白
  山城新伍に夢中
  栄町市場のタイガー
  とぉ! 大いに読みなさい
  わたしが市場に座っている意味
  向かい合うふたり
  高いか安いかを決めるのはお客さん
  ドバイ、尽きせぬ想い
  市場の優しいウィット
  ミャンマーレストラン
  艶子おばさん
  お昼は鍋パーティー
  池原化粧品店の最後の日


本日の栄町市場

  〔栄町市場の歴史〕
  〔秘密の庭〕
  〔ラジオ体操で拍手〕
  〔栄町市場の昼の帝王〕
  〔わたしはどこに行けばよいですか〕
  〔栄町市場の楽しくて、愛しい時間〕
  〔いつものブレンド〕 
  〔近未来的眼鏡〕
  〔いつも旅先〕
  〔幻の魚屋〕
  〔シーブンの凄さ〕
  〔本日の、誰にも迷惑かけない〕
  〔百年前のてんぷらの値段〕
  〔本日の、一番の賑わい〕
  〔アイスコーヒーテイクアウト〕
  〔ミャンマーのミルクティー〕 
  〔昼と夜とは別の顔〕
  〔小さなトンネルを抜けて〕
  〔明日買えー〕
  〔そっくりの顔〕
  〔栄町市場の中心〕
  〔コーヒーごちそうさま〕
  〔お鍋ごちそうさま〕
  〔本日のお供え物〕
  〔春休み〕
  〔わたしには向かない商売人〕
  〔赤ちゃんとお母さんのヒーロー〕
  〔名前が覚えられない〕
  〔バーレーンから〕
  〔美味しい肉に罪はない〕
  〔肉屋さんでは浮気ができない〕
  〔気持ちはシーブン〕
  〔美味しい物はひとりで食べない〕
  〔栄町のロカビリースター〕
  〔洋服のお直し〕
  〔隣近所の連係プレー〕
  〔現金のシーブン〕
  〔いい時代〕
  〔本日の、テーゲー〕
  〔泣ける300円〕
  〔規則正しく並んだ刺身〕
  〔本日の、与那嶺靴店〕
  〔チョコクッキー売り切れました〕
  〔必要な人に必要なだけ〕
  〔本日の、その通り〕
  〔来月からは〕
  〔利潤100円〕 
  〔サンディエゴから新大久保〕
  〔キャベツ、キャベツ!〕
  〔惣菜チームワーク〕
  〔あっちにしときなさい〕
  〔刺身、食べていけば〜〕
  〔また食べたくなってきた〕

アコークローの娘 

  『アコークロー』とわたし
  『アコークロー』とわたし2
  『アコークロー』とわたし3
  父とわたし、それぞれのソウルベースボール
  お小遣いで『ブッダ』
  母の描いた地図
  金色の妹
  首里の風に吹かれて 
  あのころのわたしたちへ
しーぶん(おまけ)
はだかの付き合い わたしはこうして家出した
 
旅する小書店 

  韓国語で読める日まで
  銀の鈴
  友人が生まれた国
  異国と故郷
  余計な物が見えない分、心が近くなる
  日曜日の彼女たち
  パリ、フジタ
  小さな橋
  世界中がウチナーンチュ
        あとがきとして


「向かい合うふたり」より

 小書店にはじめて座った日のことをよく覚えている。あれは風の強い春の日でした。
 最初の挨拶は大きい声でしっかりと相手の目を見て! と意気込んだわたしは、金城さんに張り切って挨拶した。
「今日からよろしくお願いします。分からないことばかりですが、がんばります!」
 すると、彼女はふーんと少し頷いたかと思うとカウンターから身を乗り出して一言。
「が、ん、ば、る、な」
 まさか、最初の挨拶をそんな風に返されるとは思っていなかったわたし。その場でぽかーんと口を大きく開いてしまった。
 がんばったところでお客さんが来るの? まずは続けること! 毎日座らんとー、あやちゃんの顔と小書店を覚えてもらうことがまずは必要だよと彼女の洗礼? は続く。
 それからも、つい口を滑らせて「がんばる」と言ってしまうわたしに、「だーかーらー、がんばるって言わない」と金城さん。
 次第に頑張る意欲もなくなり(!)、とにかく座り続けることがわたしの目標になったのでした。
「あやちゃん、まずは3年。休んでもいいから3年座ることだよー」

「あとがきとして」より

……時間が経つにつれ、金城さんをはじめとする市場の人たちとの会話が増えていき、その日々はどんどん彩りを帯びるようになった。彼女たちの人生が実に豊かで面白いことを知ったから。これは書かずにはいられないというか、独り占めしたくないというか。
 魅力的な彼女たちの秘めた物語を書いてみたいと思った。



●著者略歴
宮里綾羽 みやざとあやは
1980年、沖縄県那覇市生まれ。多摩美術大学卒業。2014年4月から宮里小書店の副店長となり、栄町市場に座る。市場でたくましく生きる人たちにもまれながら、日々市場の住人として成長中。ちなみに、宮里小書店の店員は店長と副店長。池澤夏樹公式サイト「Cafe impala」で連載中。