南島考古入門 掘り出された沖縄の歴史・文化
沖縄考古学会編
四六判ソフトカバー 264頁 カラー口絵8頁
沖縄考古学の全貌がこの一冊に!
四十年ぶりに、沖縄考古学会が「考古学の成果を市民のなかへ」というスローガンのもとに執筆された普及書の決定版。
眠りから目覚めた歴史を掘り起こし、沖縄の過去を、そして未来を知るための、沖縄考古学の最前線の書。
沖縄考古学会、総勢70名が書き下ろした充実の内容。
「私たちが生活する地面の下には過去数万年前から現在に至る悠久の歴史が埋もれている。一昔前まで一千年の歴史しか辿れなかった沖縄の歴史が、今では数万年前の歴史に遡って辿れるようになった。考古学という学問の進展によってである」
●目次
巻頭グラビア ・
はじめに
第1章 南島考古学への招待
第1節 総論
第2節 琉球列島の地理的環境
第3節 琉球列島における考古学の歩み
第4節 沖縄考古学会のあゆみ ―草創期の頃―
第5節 地域と時代の区分について
第6節 琉球・沖縄の歴史区分と考古学編年
第2章 旧石器時代
第1節 総論
第2節 旧石器時代と沖縄の環境
第3節 周辺地域の旧石器文化と琉球弧
第4節 港川人の発見
第3章 新石器時代
第1節 総論
第2節 琉球列島の自然環境
第3節 奄美諸島の遺跡
第4節 沖縄諸島の遺跡
第5節 宮古・八重山諸島の遺跡
第4章 グスク時代
第1節 総論
第2節 農耕のはじまりとグスク時代の文化
第3節 グスク時代の時期区分
第4節 グスクと社会
第5節 グスク文化の地域性
第6節 陶磁の道
第7節 古瓦と建築物
第8節 武器・武具
第9節 銭貨と経済
第10節 琉球王国のグスク及び関連遺産群
第5章 琉球王国時代
第1節 総論
第2節 集落の発掘
第3節 交通と交易
第4節 窯業
第5節 墓
第6節 番所跡
第7節 寺院跡
第6章 近現代の考古学 〜新たな研究の広がり〜
第1節 総論
第2節 近代遺跡
第3節 戦争遺跡
第4節 水中遺跡
第5節 自然科学と考古学
コラム
・シカ化石と「骨製品」
・琉球列島最古の土器を探れ
・土器からみる地域性
・弥生時代並行期の土器文化
・自然遺物からみた食糧事情
・貝類からみたサンゴ礁の恵み
・形質からみた先史ウチナーンチュ
・平敷屋トウバル遺跡の線刻画石柱
・宮古・八重山諸島の下田原期・無土器期における文化系統
・奄美・沖縄諸島における農耕のはじまり
・グスク論争
・厨子甕
・出土文字資料・紀年銘厨子・碑文
遺跡紹介
・奄美諸島の旧石器遺跡
・白保竿根田原洞穴遺跡
・山下町第一洞穴遺跡
・ウフタ・遺跡
・古我地原貝塚
・広田遺跡
・城久遺跡群
・カムィヤキ古窯跡
・今帰仁城跡周辺遺跡
・東方のグスク
・湧田古窯跡
・黒石川窯跡
・銘苅墓跡群
・喜名番所跡
・天界寺跡
・円覚寺跡
・沖縄陸軍病院南風原壕
人物紹介
・多和田真淳
・國分直一
・高宮廣衞
・徳永重康
・大山盛保
・三上次男
・伊波普猷
・稲村賢敷
・ジョージ・Η・カー
博物館紹介
・沖縄県立博物館・美術館
・沖縄県立埋蔵文化財センター
・鹿児島県上野原縄文の森
・八重瀬町立具志頭歴史民俗資料館
・広田遺跡ミュージアム
・宇宿貝塚史跡公園
・宮古島市総合博物館
・石垣市立八重山博物館
・伊仙町歴史民俗資料館
・今帰仁村歴史文化センター
・世界遺産座喜味城跡ユンタンザミュージアム
・那覇市立壺屋焼物博物館
・浦添市歴史にふれる館
・南風原町立南風原文化センター
はじめに
私たちが生活する地面の下には過去数万年前から現在に至る悠久の歴史が埋もれている。一昔前まで一千年の歴史しか辿れなかった沖縄の歴史が、今では数万年前の歴史に遡って辿れるようになった。考古学という学問の進展によってである。
過去の物質的資料を媒介として研究される考古学という学問の進展は、文字に記録されなかった古い時代だけでなく、近代や現代をも含め、あらゆる時代を対象とするようになってきた。本書は、こうした最近の考古学研究の動向を踏まえて記述された沖縄考古学の普及書である。以前、私たち沖縄考古学会では沖縄の先史時代を知るための概説書として『石器時代の沖縄』を刊行した。その出版の目的は、「沖縄考古学の研究成果をわかりやすく記述し、考古学になじみの薄い方々に沖縄の人びとの祖先の歩み」を知ってもらうという、いわば沖縄考古学の普及書という役割を果たすことであった。当時は沖縄考古学研究に取り組む研究者も少なく、数人の会員が執筆分担し悪戦苦闘しながらなんとか刊行までこぎつけたのが思い出される。幸いにして、この沖縄考古学普及書は、多くの読者をえることができ沖縄考古学の扉が中・高校生をはじめ一般の考古学ファンの方々にノックされ沖縄先史時代理解のため一定の役割を果たすことができた。
早いもので『石器時代の沖縄』が出版されてから四〇年の歳月を経過した。その間の沖縄考古学研究は飛躍的に高まり、その研究対象も前述したように先史時代にとどまらずグスク時代、琉球王国時代、近・現代とあらゆる時代を対象とするようになった。研究領域も多岐にわたり研究者の数も当時の数十倍にも膨れ上っている。そうした状況下、会員諸氏の間から『石器時代の沖縄』の刊行以来蓄積されてきた沖縄考古学研究の成果について、社会に広く紹介していくことの必要性が提起されるようになった。こうした会の動向を踏まえ、今回「考古学の成果を市民のなかへ」というスローガンのもと本書の出版を企画することになった。
現在、いろいろな形で沖縄アイデンティティーが叫ばれており、改めて私たちのルーツに想いを馳せ、沖縄の地下に埋もれた歴史を多くの方々に紹介しようというのが本書のねらいである。執筆には沖縄考古学会の会員七〇名があたり最新の研究成果を駆使し、かつ一般の読者にもわかりやすい記述を心がけることにした。読者の皆さんに沖縄考古学の面白さがいくらかでも伝われば幸いである。
●編著者プロフィール
沖縄考古学会
沖縄考古学会は1969年9月21日沖縄の考古学研究を推進する目的で設立された学会です。学会を通して会員相互が連携し、交流を深めてきました。沖縄考古学会の活動として、学会誌『南島考古』を発行し、本会誌は2017年現在36号を数えています。
また、ニュースレターとして刊行されている『南島考古だより』も、107号まで発行されています。毎月第3金曜日には、月に一度の定例研究会を開催し、遺跡調査の報告会や研究発表を行っています。年に1度行われる総会では、沖縄の考古学研究をテーマに講演や報告が行われています。
http://nanto-ko-ko.org/
●2018年4月初版第一刷発行