• 『宮古島の方言集  〜平良の方言を中心とした言葉〜』

『宮古島の方言集  〜平良の方言を中心とした言葉〜』

978-4-89982-393-3

5,500円(内税)

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渡真利 章良編著
B5判・666頁
定価(本体5000円+税)
ISBN978-4-89982-393-3

宮古島の平良の方言二万三〇〇〇語以上を収録
島の言葉の表現の豊かさや面白さがわかる。

「道を越えれば言葉が変わる」と言われるほど、宮古島の方言にはかなり多くの表現があり、地域によって違っている。本書は宮古島で長年小学校教諭を務めた著者が身の回りの言葉や文献から多くの言葉を集めたもの。例文も載っているので、どういう風に使用されたかがわかる。

●はじめに
 最近、方言の見直しが叫ばれるようになった。言葉は文化であると言われながら、次第に忘れ去られようとしているようである。事実、今の子どもは方言が話せない。話せないどころか聞くことさえもできない。戦前・戦中は標準語励行の徹底した指導のもとで、教室の壁や集会所など、いたるところに「いつでもどこでも標準語」などの札が貼り出されていた。特に学校では「方言札」なるものがあって、方言を使用した人はこの「方言札」を首にかけて歩かなければならなかった。そのためか市街地ではまがりなりにも標準語が
励行されることとなった。それが今になって方言が話せない事態になってしまったのである。しかし、方言を後世に残すためにも、現時点で集められる言葉を全て収集することにした。
 そのため本書は辞典や事典ではなく、あくまで方言語彙を集めたものである。著者が幼少のころから使用していた方言や長老の方、先輩の方々から聞いた会話などから集めた言葉は多岐にわたり、また専門家ではないために体系的なものではなく、耳にする語彙、表現、慣例句や諺など全てを無作為に収集した。また、年中行事や祭祀の詳細、地名や植物、方言ではない歴史的用語やできごとも取り入れた事典的内容も含んでいる。
 方言の収集を始めたのが、今からおよそ30 年以上前である。そのころは宮古島の方言に関する資料もなかなか見つからず、各種新聞記事や各市町村が発行するパンフレット・施設や団体などの資料も参考にした。また沖縄語(沖縄本島で使用している方言)などを宮古島の方言から合致する言葉を探して記録したりした。
 「道を越えれば言葉が変わる」と言われるほど、宮古島の方言はかなり多くの表現があり、宮古全域の方言をまとめることはできなかった。特に動植物名などは地域によって、さまざまな言い方があり、同じ表現(発音)でも全く別の動植物を表したりする。
 さらに宮古島の方言には日本語にない発音が多く、そのために独特の文字を使用しなければならなかった。方言をカタカナで表現し、独特の発音については説明を加えた。整理作業でカタカナ表記や分別書きに関しては宮古方言の研究者である野原優一先生にアドバイスをいただき、参考にさせていただいた。しかし最終的には私の方でアドバイス通りの作業が十分行えず、修正されていない点があることをお断りしておく。
 辞典としての活用には難しい点もあると思うが、方言の専門家でもなく、時間的制約などもあるため、今回は平良方言の独特な表現や言葉を資料として残しておくためにも、思い切って出版することとした。


●著者プロフィール
渡真利章良(とまり しょうりょう)
1931(昭和6)年生まれ。
宮古島市(旧平良市鏡原)出身。昭和23年新里小学校(現在の上野小)を皮切りに教職に就く。以後、鏡原小、平良第一小、久松小、西城小、池間小、北小を歴任。昭和58年、宮古教育事務所社会教育主事として上野村教育委員会勤務。さらに宮古少年自然の家主任専門職員、宮古教育事務所社会教育主事、城辺小学校教頭に就任。平成元年に下地小学校校長、平成3年3月に鏡原小学校校長として定年退職し、43年間の教職生活を終えた。
 教職時代から「宮古の方言」を後世に残すべくコツコツと”みゃーくふつ”(宮古の言葉)を集めはじめ、現在に至る。
 令和元年9月1日、教育功労者として内閣府より叙勲・瑞宝双光章を賜る。
 現在、豊見城市在住。

●発行 2020年9月30日