• 『現代沖縄文学史』落合貞夫著

『現代沖縄文学史』落合貞夫著

ISBN978-4-89982-421-3

1,980円(内税)

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●四六判 320ページ
●定価1980円(本体1800円+税)
●落合貞夫 著
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日本のどこにも沖縄のような濃密な文学空間はないだろう。

「復帰50年」を迎え、沖縄文学の魅力と豊かな成果をふりかえる。小説を中心に、戯曲、ノンフィクションなど、代表的な沖縄文学60作品を紹介。最新の「沖縄文学」読書ガイド。

●目次

まえがき 序章にかえて

第1部 沖縄文学の形成

 第1章 戦前の小説
 「九年母」(1911) 山城正忠 沖縄近代文学における最初の小説 
 「奥間巡査」(1922)池宮城積宝 全国公募で入選した作品 
 「滅びゆく琉球女の手記」(1932)久志富佐子 沖縄に対する偏見と差別
 第2章 敗戦後の小説
 「黒ダイヤ」(1949)太田良博 戦後の沖縄ではじめて小説と呼べる作品 
 「野宿」(1950)山之口貘 沖縄から上京して作家をめざす若者像 
 「沖縄島」(1957)霜多正次 敗戦後の沖縄の実像を描く 
 「棒兵隊」(1958)大城立裕 日本軍の加害者性を明らかにした 
 第3章 60年代の文学
 戯曲「沖縄」(初演1963年)木下順二  沖縄に対する原罪の意識 
 「新南島風土記」(1964〜1965)新川明 琉球の文化論 
 「亀甲墓 実験方言をもつある風土記」(1966)大城立裕 沖縄文化の神話的構造 
 「カクテル・パーティー」(1967)大城立裕 米軍統治の欺瞞性を暴く 

第2部 70年代の文学 

 「生贄の島 沖縄女生徒の記録」(1970)曽野綾子 従軍女子看護学生の証言集 
 「沖縄ノート」(1970)大江健三郎 本土の日本人としての自己批判 
 「オキナワの少年」(1971)東峰夫 少年の目から見た戦後沖縄の姿 
 「沖縄の手記から」(1972)田宮虎彦 天皇制のむごさを描く戦記 
 「我羅馬テント村」(1973)長堂英吉 米軍難民キャンプの生活を描く 
 「骨」(1973)嶋津与志 沖縄戦の記憶をどう受け継ぐか 
 「世の中や」(1975)阿嘉誠一郎 復帰前後の沖縄を描く 
 「蘇鉄の村」(1976)新崎恭太郎 娼婦一家と貧しい村人との対立 
 「カーニバル闘牛大会」(1976) 又吉栄喜 米軍統治下にある沖縄のみじめな姿 
  戯曲「人類館」(1976)知念正真 ヤマトによる沖縄差別を正面から告発 
 「ジョージが射殺した猪」(1978)又吉栄喜 米兵による日本人射殺事件 
 「ロスからの愛の手紙」(1978)下川博 米兵に捨てられなかった沖縄女性 

第3部 80年代の文学 

 「ギンネム屋敷」(1980)又吉栄喜 戦争がもたらした人間性の破壊と荒廃 
 「魚群記」(1983)目取真俊 沖縄に出稼ぎに来た台湾女性を描く 
 「嘉間良心中」(1984)吉田スエ子 若い脱走兵と老娼婦の心中 
 「仮眠室」(1985)田場美津子 女性の自立した生き方を模索する 
 「午後の祠り」(1985)江場秀志 一人で家を守る老婆の姿 
 「女綾織唄」(1985)喜舎場直子 三代にわたる女の人生を描く 
 「生年祝」(1986)白石弥生 伝統的な沖縄の姑とヤマト嫁との対立 
 「平和通りと名付けられた街を歩いて」(1986)目取真俊 皇室に対する強い嫌悪 
 「風の河」(1988)小浜清志 シマで生きる人間の本源的な姿 
 「海鳴り」(1988)長堂英吉 沖縄における徴兵忌避の物語 
 「水上往還」(1989)崎山多美 シマで暮らし続けた祖母への鎮魂 

第4部 90年代の文学

 「ランタナの花の咲く頃に」(1990)長堂英吉 沖縄に生きる娼婦のしたたかさ 
 「伊佐浜心中」(1992)長堂英吉 米兵を道連れに心中する中年娼婦 
 「琉球の風」(1992)陳舜臣 薩摩藩の侵攻を描く歴史小説 
 「バガージマヌパナス」(1994)池上永一 石垣島の若きユタの誕生を描く  
 「豚の報い」(1995)又吉栄喜 沖縄の民俗的な世界を描いた小説 
 「水滴」(1997)目取真俊 語り得ぬ戦争の記憶 
 「ダバオ巡礼」(1997)崎山麻夫 フィリピンに移住した沖縄人の悲劇 
 「魂込め」(1998)目取真俊 霊力を喪失したユタ 
 「黄色軍艦」(1998)長堂英吉 ヤマト党と清国党の対立を描く歴史小説 
 
第5部 2000年代の文学

 「ゆらてぃく ゆりてぃく」(2000) 崎山多美 「シマコトバかきまぜ文体」の小説 
 「人骨展示館」(2002)又吉栄喜 本土に翻弄される沖縄人の姿 
 「風音 The Crying Wind」(2004)目取真俊 いまだ収骨されない遺骨の声 
 「虹の鳥」(2004)目取真俊 人々の魂を骨抜きにする軍用地料を描く 
 「メタボラ」(2006)桐野夏生 南国を舞台としたダークな物語 
 「テンペスト」(2008)池上永一 琉球王府の滅亡を描く時代小説 
 「K共同墓地死亡者名簿」(2008) 大城貞俊 死亡者名簿を管理する一家の物語 
 「カデナ」(2009)池澤夏樹 ベトナム戦争時の沖縄を描く長編 
 「眼の奥の森」(2009)目取真俊 米兵による少女暴行事件 

第6部 2010年以降の文学

 「レールの向こう」(2014)大城立裕 ジュゴンの海の恵み 
 「ヒストリア」(2016)池上永一 見放されたボリビア移民の物語 
 『クジャ幻視行』(2017)崎山多美 沖縄の記憶を再生させる死者たちの声 
 「宝島」(2018)真藤順丈 敗戦から復帰までの沖縄の歴史を描く大河小説 
 『ディスタント』(2019)ミヤギフトシ クィアのカミングアウト 
 「翡翠色の海へうたう」(2020)深沢潮 沖縄の朝鮮人従軍慰安婦を描く  
 「首里の馬」(2020)高山羽根子 沖縄の記憶を未来に伝える大切さ 
 「彼岸花が咲く島」(2021)李琴峰 女性が統治する寓話的世界 

  〈作家略歴〉 
  〈引用・参考文献〉 
  〈年表〉 

●著者略歴
落合貞夫(オチアイサダオ)
1954年香川県高松市生まれ。著書に『讃岐の文学案内』(文芸社、2019年)、『四国路・文学の旅 名作のふるさとを訪ねて』(文藝春秋企画出版部、2020年)、『「悪」とたたかう村上春樹 全長編を読みほどく十四章』(文藝春秋企画出版部、2021年)。

2022年3月3日 初版第一刷発行