戦後ひめゆりたちの新しい生活はどのように始まったのか
1945年6月18日、解散命令を受けた学徒たちは捕虜になり収容所へ。
その後文教学校を修了して教師になっていくまでのおよそ8ヶ月の歩み。
前作『ひめゆりたちの春秋』は1945年3月22日の最後の留送別会までの寄宿舎の生活を追ったものである。
仲宗根政善の『ひめゆりの塔をめぐる人々の手記』は1945年3月23日南風原病院を目指して学園を出発した時から6月18日の解散命令後、壕を脱出して米軍に収容されるまでを学生の手記を中心に綴られている。
本書はその後を受け、一部重なりあうところから、彼女たちの戦後を追っていったものである。
■あとがき
一九四五年六月一八日、学徒たちは解散命令を受けて壕を脱出。そして避難先で、米軍の捕虜となり、収容所に送り込まれていく。
一九四六年一月一〇日、沖縄文教学校開学。文教学校開学の知らせを受けて、学徒たちは、各地の収容所から駆けつけて来た。そして、二か月の修学期間を終え、一期生たちは、教師になっていく。
捕虜になって収容所へ送り込まれてから文教学校を終了して教師になっていくまでおおよそ八か月。一年にも満たない期間である。それは、確かに短いが、その間に起こった出来事は、それこそ、その一つ一つが驚きに満ちた未知との遭遇とでもいえるものであった。
はじめて目の前にしたアメリカ兵にしろ、収容所での生活にしろそうだが、なによりも文教学校での授業がそうだった。女師・一高女時代に教えられたことと、それは全く異なっていたからである。彼女たちは、戸惑うと同時に、その新鮮さに心を奪われていく。
わずかな期間であったが、彼女たちは、そこで学んだ生き方を胸にして、新しい時代に向かって歩き出したのである。
本書は、収容所へ送り込まれた時から、文教学校を終了し、故郷に帰って肉親と再開するまでのほぼ八か月間のことを扱ったものである。そしてそれも、ひめゆり平和祈念資料館がまとめた『帰郷』を用いているだけである。女師・一高女の学徒隊、いわゆる「ひめゆり学徒隊」として、負傷兵の看護にあたり、捕虜になり、収容所を体験し、文教学校を終了し教師になっていったのは、『帰郷』に手記が収録されている人数をはるかにこえているはずである。それだけに、多くの拾い残しがあるに違いない。心残りだったが、ひょっとすると『帰郷』だけでも、その大筋はつかめるのではないかと思い、意を決して、まとめてみたものである。
ひめゆりたちは、教壇にたち、文教学校で学びなおしたことを、教えていくことになるが、それで終わったわけではなかった。さらなる新しい道を生き始める。彼女たちは、教師への道を「第二の人生」への出発であったと書いていた。それに倣って言えば「第三の道」へ、歩みを進めていく。「ひめゆり平和祈念資料館」の建設に向けてである。
ひめゆりの物語は、その建設そして開館し、語り部として、資料館に通い、その役目を次世代に次いでゆくまで続いていく。いつかその平和を訴えてきた「第三への道」についても、まとめる必要があるだろう。
平和という言葉は、戦時中はいうにおよばず、現今も独善的に使われ随分手あかがついてしまったが、戦場を体験したひめゆりたちが願いをこめて使ったように、洗い直し、まっさらにして、ついでいくためにも。
二〇二一年一二月
仲程昌徳
■目次
はじめに
1章 収容所のひめゆりたち
1 伊良波収容所
2 百名収容所
3 88野戦病院
4 野嵩収容所
�蕎蓮,劼瓩罎蠅燭舛虜動榮亜 �
1 久志へ
2 コザ孤児院へ
3 真喜屋へ
�珪蓮ー�容所の日々
1 青空教室の先生たち
2 訪問者たち
3 遺骨収集
�絃蓮(原騎惺察 �
1 文教学校へ
2 文教学校の日々
3 教育実習
4 文教学校卒業
5 故郷へ
6 「第二の人生」へ
補章 引率教師たちの戦後
あとがき
参考文献
■著者プロフィール
仲程 昌徳
1943年 南洋テニアン島カロリナスに生まれる。
1967年 琉球大学文理学部国語国文学科卒業。
1974年 法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了。
1973年 琉球大学法文学部文学科助手。
1985年 琉球大学教養部教授。
2009年 定年で退職。
【主要著書】
『山之口貘—詩とその軌跡』(法政大学出版局、1975)、『沖縄の戦記』(朝日新聞社、1982)、『沖縄近代詩史研究』(新泉社、1986)、『沖縄文学論の方法 』(新泉社、1987)、『伊波月城』(リブロポート、1988)、『新青年たちの文学』(ニライ社、1994)、『アメリカのある風景』(同、2008)、『小説の中の沖縄』(沖縄タイムス社、2009)、『沖縄文学の諸相』(ボーダーインク・以下同、2010)、『宮城聡』(2014)、『雑誌とその時代』(2015)、『沖縄の投稿者たち』(2016)、『もう一つの沖縄文学』(2017)、『沖縄文学史粗描』『沖縄文学の一〇〇年』(2018)、『ハワイと沖縄』(2019)、『南洋群島の沖縄人たち』(2020)、『沖縄文学の魅力』『ひめゆりたちの春秋』(2021)、『沖縄文学の外延』(2022)。
■2022年6月発行