• 『沖縄のもあい大研究    模合をめぐるお金、助け合い、親睦の人類学』平野(野元)美佐著

『沖縄のもあい大研究  模合をめぐるお金、助け合い、親睦の人類学』平野(野元)美佐著

ISBN978-4-89982-455-8

2,420円(内税)

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●四六判ソフトカバー  288ページ
●定価2420円(本体2200円+税)
●平野(野元)美佐 著
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お待たせしました。
待望の話題作、刊行です。




模合(もあい)、面白すぎる!

庶民を支えるユイマール(相互扶助)か、それともただの飲み会か?!

文化人類学者がフィールドワークで出会った驚きの模合の数々。

沖縄社会をぐるぐるまわしてきた模合の過去、現在、未来をさぐるユニークな沖縄現代史。
模合から見た沖縄とは。

※もあい(模合)は「頼母子講・無尽講」と呼ばれ日本全国にあった慣習でした。沖縄では、現代も生活に根ざした庶民金融であり、相互扶助、親睦グループとして、盛んに行われています。

模合をやっている人も、やったことない人も、誰かに話したくなる「はなしのタネ」がたくさん詰まっています。

《なぜ模合金を受け取るときに「ありがとう」というのか》



《「はじめに」要約》

■「模合」にヒミツってあるの? 
 沖縄で暮らしている人なら、こういう光景を目にしたことがあるだろう。
 レストランで賑やかにひとしきりおしゃべりしていたかと思うと、おもむろに財布や封筒からお金を取り出して集めだす女性たち。居酒屋でビール、泡盛を楽しそうに飲みながら、集められたお札を数える男性たち。よくみれば、手元のノートに何やら書いている人がいる。やがてそのお金はみんなが注目しているなか、おもむろに特定の人に渡される……。べつに怪しい取引ではなく、沖縄のあちこちで、ほぼ毎日繰り広げられている光景である。
 それは「模合(も あい)」と呼ばれる、沖縄では誰もが知っている「慣習」である。長年模合に参加してきたという人もたくさんいるだろう。
 沖縄で、「模合とはなんですか」とたずねると、「ただの飲み会」と言われることがある。確かに、模合は居酒屋でわいわい楽しむものというイメージが強い。大阪出身の私が模合に参加させてもらうとき、「模合を研究しに来ました」と伝えると、「ただの飲み会なのに何を調べるの?」「模合になんのヒミツがあるの?」と、不思議がられた。それは実に正しく、多くの模合は楽しい飲み会や食事会であり、なんのヒミツもないようにみえる。模合に参加してどんなに目を凝らしても、楽しく飲食している人たちがいるばかり。
 「ただの飲み会」と思われている「模合」だが、実は様々な歴史的変遷をへて、現在の姿となった。つまり「模合」を理解するためには、それなりの知見が必要なのだ。しかし幸いにも、これまで「模合」の学術的な研究があり、さまざまな論考が発表されてきた。
 本書では、こうした研究をもとに、第一章で、世界のなか、そして日本のなかでの沖縄の「模合」の位置づけを考え、第二章から第四章までは、琉球王国時代からつづく「模合」の役割をまとめてみた。いわば「歴史編」である。
 第五章から第一〇章までは、いよいよ私のフィールドワークから見えてきた模合の諸相をまとめた「現代編」である。現在の模合に関心がある方は、ここから読んでいただいてもいいかもしれない。そこから見えてきたものは、実にさまざまな理由で模合が始められ、いろいろな人びとが模合を通してつながっている姿だ。
 第一一章と第一二章は、沖縄の模合のこれからを考える「未来編」である。模合の最大の危機ともいえる新型コロナウイルス感染拡大は、模合をどのように変えたのだろうか。また最近、コロナに関係なく、沖縄の若者は模合をやらなくなっているという話をきく。若者が模合をやらなくなると、模合はどうなってしまうのだろう。
 それでは、いま模合をやっている人も、初めて模合と出会った方も、みんなが知っているようで知らない「模合」をめぐる旅に、これからお付き合いいただきたい。
 
■[模合コラム]はなしのタネ(小見出し)
 できるかぎり読みやすく記述したつもりではあるが、これまでの調査研究のまとめでもあるので、特に模合を現在やっている方には、まどろこしい部分もあるかもしれない。そこで今回は、文章の要点でもあり、また読みどころを押さえた「小見出し」を数多くつけてみた。そして次頁には通常の目次とは別に、その小見出しだけの目次を準備した。それらはいずれも模合の世界を知ることのできる断片なので、いわば「模合コラム」として、気になるタイトルから拾い読みしても楽しめるはずである。みんなの模合の場で、「はなしのタネ」として活用していただけたらうれしい。


●目次

はじめに―沖縄の「模合(も あい)」をフィールドワークする 

第一部 歴史編―模合のこれまで

一章 模合はグローバルな文化だった
 世界のモアイと沖縄の模合を比べると
 日本の頼母子講・無尽講の移り変わり
 相互扶助(ユイマール)としての模合
 ユーレーから模合へ
 模合にまつわる言葉あれこれ

二章 琉球王国時代の模合
 模合に関する古い記述
 薩摩の模合と琉球の模合
 琉球王国のなかの相互扶助

三章 明治期以降の模合
 相互扶助が息づく明治初期の模合
 営業化する模合
 女性はどのように模合をしたか
 地方における模合
 八重山・宮古の模合
 沖縄戦と模合 

四章 戦後の模合
 復帰前のドル模合
 復帰前後の混乱と模合トラブル
 復帰後の模合

第二部 現代編―模合のいま

五章 模合のリアルを知る
 模合のきっかけ
 模合を始めるといろいろある
 積み立て模合と旅行模合
 模合は組織である

六章 同級生模合の世界
 同級生という幼なじみ
 同級生ネットワークをつなぐ模合グループ
 同級生模合グループ百花繚乱

七章 さまざまな人をつなげる模合
 同業者模合と異業種模合
 親族の模合
 地域・近隣の模合
 伝統文化を支える地域模合
 友人・知人の模合
 政治と模合
 多種の模合をどう組み合わせるか

八章 金融としての模合
 お金目的の模合参加
 模合が崩れるとき
 親睦模合の持ち逃げ

九章 模合を介した助け合い
 模合仲間と助け合う
 グループのそとに広がる助け合い
 老いに寄り添う
 模合仲間とはなにか

一〇章 世界のウチナーンチュと模合
 世界のウチナーチュはどんな模合をしているのか
  米国ハワイ/米国フロリダ/ ボリビア/ブラジル/ペルー/アルゼンチン

第三部 未来編―模合のこれから

一一章 最大の危機?! 新型コロナウイルス
 新型コロナウイルス、どうする模合?
 コロナ禍による変化とは
 コロナ禍で失われたもの 

一二章 模合の未来と沖縄の若者
 若者の模合ばなれ
 子ども時代に模合に親しむ
 若者と模合の距離感
 模合から距離をおく人たち

終章 模合とは、人と何かを「合わせること」

あとがき  謝辞  引用文献 

 
●著者略歴
平野(野元)美佐(ひらの−のもと みさ)
1969年大阪府生まれ、兵庫県西宮育ち。総合研究大学院大学文化科学研究科修了・博士(文学)。鹿児島国際大学、天理大学を経て、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・教員。専門は文化人類学、地域研究。
著書『アフリカ都市の民族誌』(明石書店・2005年)、主要論文「親睦模合と相互扶助」『生活学論叢』26号(2015年)、「宮古島における子どもの祝いの発展とその背景」『沖縄文化』53(1)巻125号(2023年)など。


2023年11月30日 初版第一刷発行