• 『ひめゆり資料館の一隅から』仲程昌徳著

『ひめゆり資料館の一隅から』仲程昌徳著

978-4-89982-491-6

2,200円(内税)

購入数
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●四六判 230頁
●定価2200円(本体2000円+税)
●仲程昌徳著
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ひめゆり平和祈念資料館の理事長を長年務めた著者が、資料館を去るにあたってまとめた一冊

ひめゆり平和祈念資料館の多くの刊行物やその改訂の経緯。ひめゆりを詠んだ歌、初代館長の仲宗根政善のこと、毎年の『年報』からの報告など、資料館のさまざまな側面が見えてくる。

●目次
1 ひめゆり資料館の刊行物
ひめゆり資料館の仕事 
「ガイドブック」の改訂をめぐって 
『墓碑銘—亡き師亡き友に捧ぐ—』 
『資料館だより』について 


2 ひめゆりを詠んだ歌
『姫百合歌集』 —「仲宗根政善ノート」から 
ひめゆりを詠んだ「琉歌」—「ハワイ二世と『ひめゆりの塔』」補遺 

3 追悼・仲宗根政善
百姓の子らしく —「ハワイ日記」の一年 
歌の終わり —『蚊帳のホタル』を読む 
追悼・仲宗根政善 

4 ひめゆり平和祈念資料館の一隅から 
「次世代の平和講話」がスタート /新しい風 /国際化時代にむけて /メモリーウォーク /コロナの流行 /改装オープン /県内での移動展 /「ひめゆり展」初の離島開催 /「ひめゆりとハワイ」プロゼクト /特別展「ひめゆりとハワイ」 /命のバトン—『感想文集 ひめゆり』が伝えてきたもの 

  あとがき 



●あとがき

ひめゆり平和祈念資料館の一隅から見つめてきたものを集めてみた。ときに必要にせまられて、時に紹介しておく必要があるのではないかという思いがあって書いてきたものである。
定年で退職したあと、間をおいて、ひめゆり平和祈念資料館につとめることになった。設立当初からいろいろ知っているつもりでいたが、そうでもなかった。
資料館が、こんなに忙しい所だということが、まずわかっていなかった。
職員は朝早くから、展示室や機器その他の点検、掃除などをしていて、入館者を迎える準備にそなえていた。清掃業者や庭の管理業者がいて、それぞれに業務をこなしてくれているとはいえ、館員がしなければならない仕事が多かった。
それが、修学旅行シーズンになると、大変な忙しさで、腰掛ける暇さえない状態がつづくのである。
年中無休の中で休暇や休息に関する問題は、私が考えるべきことの一つだと思ったが、館に、増員するほどの余裕はなかった。言い逃れになるが、館員の無私のこころに頼るほかなかった。
忙しいのは、入館者の対応に関することだけではなかった。
資料館は、資料集や特別展、報告書の類から定期の刊行物まで、実に多くの図書を出していた。その分量にはおどろくべきものがあった。そのうえで、当面やるべきことがあって頑張っているその忙しさは想像以上であった。
ひめゆり学徒の皆さんが、証言にたっている頃まではまだ余裕があったといっていい。彼女たちが、退場したあと、どうにかして、もとのように余裕のある時間をと思いながら、結局何もできないまま、館を去ることになってしまった。慙愧の念に耐えないが、いつも笑顔でもって迎えてくれた館員の思いやりに感謝する次第である。

発表誌は、それぞれエッセーの最後に付した。それがないのは、未発表のものである。
いつもお世話になっている池宮紀子さんに面倒をおかけした。記してお礼の言葉としたい。

           二〇二五年六月 資料館を去るにあたって  仲程昌徳

●著者略歴
仲程 昌徳(なかほど・まさのり)
1943年8月 南洋テニアン島カロリナスに生まれる。
1967年3月 琉球大学文理学部国語国文学科卒業。
1974年3月 法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程修了。
1973年11月 琉球大学法文学部文学科助手として採用され、以後2009年3月、定年で退職するまで同大学で勤める。
主要著書
『山之口貘―詩とその軌跡』(1975年 法政大学出版局)、『沖縄の戦記』(1982年 朝日新聞社)、『沖縄近代詩史研究』(1986年 新泉社)、『沖縄文学論の方法―「ヤマト世」と「アメリカ世」のもとで』(1987年 新泉社)、『伊波月城―琉球の文芸復興を夢みた熱情家』(1988年 リブロポート)、『沖縄の文学―1927年〜1945年』(1991年 沖縄タイムス社)、『新青年たちの文学』(1994年 ニライ社)、『小説の中の沖縄―本土誌で描かれた「沖縄」をめぐる物語』(2009年 沖縄タイムス社)。『宮城聡―『改造』記者から作家へ』(2014年)、『雑誌とその時代』(2015年)、『沖縄文学の一〇〇年』(2018年)、『ハワイと沖縄』(2019年)、『南洋群島の沖縄人たち』(2020年)、『沖縄文学の魅力』『ひめゆりたちの春秋』(2021年)、『沖縄文学史の外延』『続ひめゆりたちの春秋』(2022年)、『ひめゆりたちの「哀傷歌」』『沖縄文学の沃野』(2023年)、『沖縄文学談叢』(2024年)以上ボーダーインク。

●2025年7月発行