A5判152ページ
人々は野生の生き物を飼いならし、それらから乳や肉、卵、役を得、農業への使役、狩猟や猛獣からの防御、害獣退治へと利用してきた。家畜は、私達の生活のなかで陰日向となり、深く人間の生活を支えてきたといえる。
各種機械類の発明発展による「脱畜力化時代」を迎えた現在、家畜の利用は縮小し、なかでも生産効率の悪い在来家畜は、隅に追いやられ、絶滅の危機に瀕している。
琉球列島には、馬、豚、犬、水牛、鶏、家鴨など多種類の在来家畜が飼われ、多様性が維持されているが、しかしながら一部の在来種は絶滅の途をたどっている。
「琉球在来家畜の保存と活用」を研究課題とし、四〇年以上にわたって取り組んできた著者が、シマの人々に愛されてきた在来家畜を紹介、その潜在能力を再評価しながら、あらたな活用の方法を探る。
【目次】
まえがき
第一章 在来家畜とは
一、家畜化の動機
二、在来家畜とは何か
三、一五世紀の琉球各島にみられる家畜
四、南からの農耕文化、北からの牛・馬の合流
五、琉球列島への家畜の渡来
六、方言名からの来歴
七、農耕の始まりについて
●コラム サトウキビ(甘蔗)と製糖法の導入
●コラム 与那国島の獣殺傷禁止期間(カンブナガ)
第二章 人々と深く関わった在来家畜
一、馬
1.馬を知る
馬の進化の経過と伝播/アジア馬の祖先/馬の毛色/馬肉・馬油・ 尾毛/
琉球への伝播/馬とハブ毒
2.琉球における馬の使役の変遷
3.宮古馬の改良
4.与那国馬
5.馬を活用し楽しもう
6.馬の行事
7.在来馬とロイヤルファミリー
●コラム 遺伝のはなし 馬とロバの関係
二、豚
1.豚を知る
起源と伝播/豚肉の名称
2.改良の経過
アグーの復活
3.アグー肉に対する高い評価
三、山羊
1.山羊を知る
起源と伝播
2.沖縄における改良の経過
3.肉用山羊
4.乳用山羊
5.闘山羊(ピージャーオーラサイ)
6.台湾の山羊事情
7.台湾における発情季節の制御
●コラム 間性(ホーダニ)の遺伝
●コラム 寝込んだ山羊飼い老婆
●コラム 山羊汁の山羊汁の効能
●コラム 多良間ピンダで島興し
四、牛
1.牛を知る
起源と伝播/ひれステーキとはどの部分
2.沖縄における改良の歴史
役から肉へ/乳用牛=酪農
3.闘牛(ウシオーラセー)
五、在来鶏(チャーン)
1.鶏を知る
起源と来歴/属間交配
2.沖縄の養鶏の変遷
採卵鶏/肉用鶏:ブロイラー
3.チャーンについて
4.タウチー
●コラム 友引と鶏
●コラム チャーンとお年寄り
第三章 人々に愛された在来家畜
一、水牛
1.水牛を知る
起源と来歴
2.沖縄における水牛の用途
二、琉球犬
1.犬を知る
起源と来歴/引っ張り合い
2.琉球犬の特徴
●コラム 犬が化けた山羊
三、猫
1.猫を知る
起源と来歴
2.沖縄の猫の特徴
●コラム 老人ホームと家畜
四、かんのんアヒル(広東家鴨)=バリケン
1.アヒルを知る
起源と来歴/ヘルシーなバリケン肉
2.かんのんアヒルの特徴
3.役用としての活用を
●コラム 薬膳料理法(クスイムン)
五、ミツバチ
1.ミツバチを知る
特殊な社会構造/プロポリス
2.沖縄における養蜂の始まり
3.花粉媒介者としての有用性
4.ミツバチの大量死
六、野生動物からの家畜化の研究
1.ミフウズラ
2.ヨナクニハツカネズミ
オキナワハツカネズミ
付録 畜産についての豆知識
参考文献および論文
あとがきに代えて
【著者略歴】
新城 明久(しんじょう・あきひさ)
現在:琉球大学名誉教授、データ・アナリシス研究所代表。
出生地:沖縄県宮古島市
最終学歴:東北大学大学院農学研究科博士課程修了
主な著書:『新版 生物統計学入門』(朝倉書店)、『新版 動物遺伝育種学入門』(琉大農学部)、『PC SASによる基礎統計学入門』(東海大学出版会)、『ノンパラメトリック法』(金城印刷)、『農業・産業活性化へのヒント』(新星出版)など。
■2010年9月27日 初版第一刷発行