四六判 223頁
会った人、すれちがった人
戦前、戦後を生き抜いた新聞人が綴った人物記。遺作となった一冊。
あの人この人たちの意外な一面、寸鉄人を刺す言葉、初めて明かされる話。
本書は第一章「沖縄を訪れた偉才たち」として、日本民芸協会の人々(バーナード・リーチ、浜田庄司、柳宗悦ら)、棟方志功、大原総一郎ら沖縄の富に魅せられた巨匠たちの人物伝を記している。
沖縄タイムス社は1959年から文芸春秋社と提携して、有名作家たちを招いて沖縄各地で講演会を催した。井上靖、犬養道子、大佛次郎、大江健三郎−。錚々たる作家たちが沖縄を訪れたことが、戦後のウチナーンチュの文化的・精神的枯渇を癒してきたことは想像に難くない。
第二章「駆け抜けていった人々」として、沖縄の画家、研究者、社会運動家、詩人・作家、ジャーナリストたちと著者とのやりとりが綴られる。著者の牧港篤三氏は1948年、豊平良顕、高嶺朝光らとともに『沖縄タイムス』を創刊、1950年には『鉄の暴風』を著した。
その後も『新沖縄文学』の初代編集長を務め、1983年には一フィート運動の会の代表になるなど、戦後沖縄のジャーナリズム、文化活動、反戦運動を牽引し続けてきたが、今年4月14日、91歳で死去。本書は戦前、戦後を生き抜いた新聞人が綴った人物記としてもその価値は高い。