井谷泰彦 著 四六判 220 頁
二〇世紀初頭から一九六〇年代まで、沖縄の言葉(ウチナーグチ)を使った人に与えられていた罰札−方言札。これまで実態や歴史を問われないままに「同化政策の道具」「言葉狩り」という評価がなされてきたこの札について、発生から広がりまでを民俗学的視点から丹念に解き明かしていくことで、その本質を理解しようと試みる。言葉について考えることは、共同体や民族や国家、一人一人の人間の生を考えることにもつながっていく。方言札を通して言葉と人間、社会と文化の本質に迫る意欲作。付論として『山之口獏と「方言札」』ほかを収録。
目次
序
第1章 「方言札」の復元
(1) 慣習的な「方言札」制度
(2) 「方言札」とはどのような札であったか
(3) 「方言札」の自然発生的性格
第2章 「方言札」とエスニシティ
(1)「方言札」ができるまで―その歴史的背景をめぐって
(2)過熱化する会話教育―「方言札」誕生の理由
(3)「方言札」を支えた思想―近代沖縄のエスニシティ
第3章 各時代の「方言札」と言語教育
(1)「方言札」と言語生活の時代区分
(2)普通後時代の言語教育と「方言札」
(3)「標準語励行期」の言語教育と「方言札」
(4)戦後の言語教育と「方言札」
第4章 「方言札」の原像
(1) 間切村内法とは何か
(2) 「方言札」の原像
(3) ウチナーグチの未来
付論
1、山之口貘と「方言札」
2、翻訳の政治性をめぐって
あとがき
〈著者紹介〉
井谷 泰彦(いたにやすひこ)
1955年京都生まれ。早稲田大学大学院社会科学研究科修士課程修了