小松かおり 著 A5判 208頁
シシマチの技法と新商品から見る沖縄の現在
那覇市第一牧志公設市場をめぐる文化人類学的フィールドワークとアグー、モズク、海ぶどう、そして島バナナの生産の現場での調査。市場の変化を通して考える、沖縄のこれまでとこれから。
目次
プロローグ
第一牧志公設市場の不思議
第一部 第一牧志公設市場とシシマチの世界
第一章 第一牧志公設市場の成り立ち
第二章 シシマチ(精肉市場)の極意
第三章 観光化と地元とのバランス
第二部 市場の向こうに見える生産の現場
第四章 アグー -「幻の豚」の復活
第五章 モズクと海ぶどう -ウミンチュの産業化
第六章 島バナナ -産業化を拒否する作物
第七章 市場はどこへ行くのか
あとがきに代えて この本に至った沖縄での出会いについて
前書きなど
第一牧志公設市場には、独特の匂いがある。国際通りから市場本通りをぬけて市場に近づくと、牧志の匂いがする。はじめてこの市場を訪れた1989年以来、この匂いは変わらない。それは、沖縄各地から集まってきた食品の匂い、魚と肉と漬け物とそばと昆布とかまぼこと野菜と果物が混じった匂いだ。そして、市場を取り巻く、雑多な雰囲気も変わらない。売り場の持ち分を無視したような商品の並べ方、カラフルな商品の色合いとどぎつすぎるほどの照明、呼び込みの声、おばちゃんたちの遠慮のない視線。
この本では、沖縄の食品の流通の結節点のひとつである第一牧志公設市場の商人と、市場の商品を生産する沖縄の第一次産業に従事する人たちの仕事と暮らしを記録する。まずは、市場の現場から、売り手と買い手を結ぶ「モノ=商品」のあり方について考える。次に、商品の変化から、市場の向いている方向の変化について考える。そして、それらの商品を生産する現場から、沖縄の第一次産業の現代史について考える。そして最後に、沖縄の生活文化を反映してきた第一牧志公設市場がどこへ行こうとしているのについて考えてみたいと思う。
版元から一言
〈牧志公設市場ほどの迫力と猥雑さを感じたのは初めてだった。この市場はどうして成り立っているのか?〉
長年のフィールドワークの成果を人類学的視点で、研究者のみならず一般読者にわかりやすく市場の魅力と新商品にまつわる物語を読み解くおもしろさ抜群の文化誌。
著者プロフィール
小松かおり(こまつかおり)
静岡大学人文学部准教授。1966年生まれ。京都大学大学院理学研究科博士課程単位取得退学。理学博士。研究テーマは、沖縄の市場と生業の研究に加えて、中央アフリカ熱帯雨林の生業と食文化、バナナ栽培文化のアジア・アフリカ地域間比較など。