四六判 249頁
太平洋の島々・旧南洋群島に移民した沖縄人
昭和の文豪たちの目を通してみた沖縄人像とは
「南洋」は太平洋の赤道近くのミクロネシアの島々
戦前に南洋群島には多くの日本人、沖縄人が住んでいた
本書は昭和の文豪らによる「南洋紀行文」の中に出てくる沖縄人(琉球人)を丹念に拾ってまとめた一冊。
移民先の貧しい生活の中、一生懸命働く姿、沖縄人で集って、三味線を弾いて踊っている姿、意味不明な沖縄口をしゃべっている様子など、それらが「日本人」である文豪らにはどう映ったのか?
植民地政策に燃える当時の日本を時代背景に沖縄人の姿を捉えた一冊
●〈南洋移民と沖縄──「序」にかえて〉より
沖縄の移住者たちが、帝国主義下における植民地政策の先兵として、侵略的役割を果たしたと見るむきもないではないが、「モーキティ・クーヨー(儲けておいで)」の声に見送られて出ていった彼らには、そのような意識もなかったのではないか。しかし、彼らの帰趨は、彼らの意識と関わりなく、南洋統治のありようと密接に関わっていた。それだけに、翻弄され、無残であった。
「生活上の生命線」を求めて、南洋群島に殺到していった沖縄人は、「南進」の声が高くなっていく中で発刊されていった「南洋紀行」に、これまた、彼らの意識とは無関係に、さまざまに 写し取られていく。ここで取り上げた「南洋紀行」は、その中のほんの僅かにしかすぎないが、それだけで南洋の沖縄人がどう見られたか、ある程度知ることができるはずである。
●目次
南洋移民と沖縄──「序」にかえて
一、何処へ行くにも蛇味線持って
── 古田中正彦の見た南洋の沖縄人たち ──
二、昼間の酒盛り
── 土方久功の見た南洋の沖縄人たち ──
三、土人の床下に寝ている沖縄人
── 能中文夫の見た南洋の沖縄人たち ──
四、太平洋は沖縄女性を悲しませる
── 安藤盛の見た南洋の沖縄人たち ──
五、日本農民の南進部隊
── 丸山義二の見た南洋の沖縄人たち ──
六、沖縄は日本のジプシー
── 石川達三の見た南洋の沖縄人たち ──
七、琉球人の曖昧・不親切
── 中島敦の見た南洋の沖縄人たち ──
八、平和な島・楽園の島
── 南洋帰還者たちの回想記録を読む ──
あとがき 246
●著者プロフィール
著者略歴
仲程 昌徳(なかほど・まさのり)
1943年8月 南洋テニアン島カロリナスに生まれる。
1967年3月 琉球大学文理学部国語国文学科卒業。
1974年3月 法政大学大学院人文科学研究科日本文学専攻修士課程 修了。
1973年11月 琉球大学法文学部文学科助手として採用され、以後2009年3月、定年で退職するまで同大学で勤める。
主要著書
『山之口貘―詩とその軌跡』(1975年 法政大学出版局)、『沖縄の戦記』(1982年 朝日新聞社)、『沖縄近代詩史研究』(1986年 新泉社)、『沖縄文学論の方法―「ヤマト世」と「アメリカ世」のもとで』(1987年 新泉社)、『伊波月城―琉球の文芸復興を夢みた熱情家』(1988年 リブロポート)、『沖縄の文学―1927年〜1945年』(1991年 沖縄タイムス社)、『新青年たちの文学』(1994年 ニライ社)、『アメリカのある風景―沖縄文学の一領域』(2008年 ニライ社)、『小説の中の沖縄―本土誌で描かれた「沖縄」をめぐる物語』(2009年 沖縄タイムス社)『沖縄文学の諸相 戦後文学・方言詩・戯曲・琉歌・短歌』(2010年 ボーダーインク)、『沖縄系ハワイ移民たちの表現』(2012年 ボーダーインク)等。
●2013年発行